麗は、血のように赤い刀身の刀を手に目の前に倒れている殺人犯を見下ろす。
「哀れな魂だ…反省なしとは…。」
と呟き、麗はふと自分の手を見てハッとして駆け出した。
♪
麗は、拓が待っている山奥にある小屋を目指して、走った。そして、つくなり…。
「拓じぃ!!」
と叫んだ。
「だ・か・ら!拓に・ぃ!!!何だ!?いきなり!」
と拓も負けずと叫ぶ。麗は拓の前に座り、
「これ…!」
と言って、制服のブラウスを脱ぎ、肩を見せる。そこには…血管がうきでているようなものが、麗の首下から右腕に渡っている。拓は目を見開き、
「ちょっと悪い…。」と言ってそれを指でなぞる。拓は、スッと立ち一匹の生魚を取り出して麗に渡す。麗はそれを受け取り、噛り付いた。
「鬼が…目覚め始めてるらしい…。」
拓はぽつりと呟いた。
(…心鬼…邪心を斬るといってもやはり限界がある…。邪心を斬り続けていたら…人喰い鬼と化してしまう…。麗にも…それが…。)
拓はぼんやり考えた。あの日…心鬼の最大の秘密が知れ渡り、村人達が心鬼をおいやったことを…。麗は魚を頭も骨も全て食べ終え、一息ついた。 「…拓じぃ…食べたけど…だんだん効かなくなってる…。」
拓は うーん…と悩み、腕を組んだ。そして、普通の刀を手にして小屋をでる。
「…その辺のもん持ってくる…。待ってろよ…?」
拓の言葉に麗は頷いた。小屋の中で一人麗が和服に着替えた時だった。
誰かが小屋の扉を叩いている。麗は、
「拓じぃ?」
と言って扉を開ける。そこに立っていたのは…
「諷哉…?」
だった。その時、麗の心臓が突然脈を激しくした。麗は心臓辺りを抑え、話す。
「な…なんだ…?」
「実はこれ返すのすっかり忘れててさ〜。届けにきた。」
といって、諷哉は一冊の本を渡した。麗はぎこちなく受け取った…。何かを抑えるように…。麗の異変に気づき、諷哉は手を伸ばしながらたずねる。
「どうした?麗…。気分悪いのか?」
諷哉の手が麗の頬に触れる。
――モウ……トマラナイ……――
麗の目が見開かれ、諷哉の脇腹に手を貫き通す。
諷哉は驚きの余り、声がでなかった…。