神田は来た道を戻ることにした。
車の鍵をどこかに落としてしまったのだ。
「ちくしょう」
神田は右手に持った缶コーヒーの中身を飲み干し、
そのまま地面に投げ捨てた。
車の鍵をなくして、さらにあの大仕事の後…。
焦る心を落ち着かせるため、タバコを口にくわえる。
薄暗くなってきた。
タバコを吐き捨て、たった一人で歩き出す。
ここは大きな山の奥の奥。
車がなければ山を下るにも下れない。
「くそ、なんて不気味なんだ。幽霊でも出そうだな」
神田は一人で呟いた。
しばらくさまよっていると、頭の上に何か落ちてきた。
手で頭を払うと、地面にタバコが落ちた。
「何だ?上からタバコが降ってきたのか?」
気にしている場合ではない、と再び歩き出す。
(コツン!)
「今度は何だよ!?」
地面に空き缶が落ちた。
よく見ると缶コーヒーの空き缶だとわかる。
「俺が捨てたものが上から降ってくるってか?」
しばらくして、また何か落ちてきた。
(ポトッ!)
「おお!これは」
まさに、今捜している車の鍵だった。
鍵が上から降ってきた。
「これで帰れるぜ」
(ボトッ!)
「な、何だ?鍵の次は何だよ」
そして神田は狂ったように叫んだ。
「うわー!」
上から落ちてきたのは…。
ー続くー