街ではかなり大きなニュースになっていた。
《自分の妻を殺した男は、自宅の玄関の前で、死体となって見つかりました。
現場には、いくつか不可解な謎が残っています》
神田は、白い軽自動車で山を下る。
すっかり日は沈んでしまい、暗くて前がほとんど見えないが、物凄いスピードで走る。
自分でも信じられないくらいのスピードだった。
(ドスン!)
もう少し進めば山を抜けられただろうに。
車が物凄い勢いで呆気なく木にぶつかった。
エンジンは動かない。
「この山、早く出ねえとやばいな」
神田はたった一人で呟く。
まだ、さっき起こったことが信じられなかった。
最初にタバコが降ってきて、次に空き缶、次に車の鍵。
最後には、血まみれの女の死体が降ってきたのだ。
その死体は、神田が殺し、数分前、山奥に捨てた妻だった。いつもぐちぐちうるさいから殺してしまった。
思い出すだけでゾッとする。
この山で捨てたものは全て、上から落ちてくるらしい。
神田は自分の足で山から逃げ出そうと心に決め、勢いよく走り出す。
なんとか山を抜け出し、自分の家に着いた。
「今のは嫌な夢だったに違いない」
神田はそう言って、玄関のドアを開けようと手を伸ばした…。
その時だ。
(バシャン!)
上から壊れた白い軽自動車が降ってきた。
神田はその軽自動車に押しつぶされて、死んだ。
妻を殺した殺人犯は、山に殺されたのだ。
そしてその白い車体には、
<もってかえれ>
と、赤い血でかかれていた。
ー終わりー