「だって、あたしが昌平に声かけたらどっか行っちゃったしさ」
「おまえの顔見て
こえーって思って
びびってどっか行っちゃったんじゃねぇの?」
「何それーー
昌平マジむかつくーー」
稲葉は膨れっ面をしながらも
「まっ、けどそういうの慣れてるし
いいけどね
非常階段行くんでしょ?
先行ってんねー」
稲葉はそう言いながら
先に教室を出て行った。
たしかに男も女も
オレら非常階段に溜まってる9人には
あまり関わりたくない感じで
こっちから話しかければ普通に話す奴もいるけど、
中にはあからさまに近寄らないでオーラを出す奴もいる
オレらに関わったら内申や推薦などといったものにひびくと思ってるんだろう。
(さぁてと、オレも非常階段に行くかな)
2時間目のチャイムが鳴る少し前に
のんびりと立ち上がり教室を出た。
非常階段に行くと案の定
オレ以外の稲葉を含めた8人は
すでに溜まっている
長い夏休みあけの初日というのに加え
まだまだ残暑の残るクソ暑い炎天下の中
みんなかなりだるそうな顔をしながら座り込んだり寝転んだりしている。
「昌平
おせーじゃん」
この学年で何かと目立つ存在のオレらのその中でもひときわ目立つ存在の
明るく、ムードメーカーといった存在の、ヒロが声をかけてきた。
ちょっとみんなより遅くなったその理由
あのちょっと変わった転校生の話をしようとするその前に
ヒロが
「おまえらのクラスの転校生
まぁまぁ可愛いらしいじゃん
しかも昌平もう仲良くなったんだって?
硬派なしょーへーちゃんが女と仲良く話すなんて珍しいじゃん」
ヒロがからかいながら言う、オレは稲葉の方を見た
稲葉は舌をペロッっと出して
(もう言っちゃったもんねっ)
というように笑っている。「オレの隣の席になって
むこうから挨拶してきて
なんだかんだ喋り始めたから、聞いてただけだよ」
オレは、女と仲良く話してた訳ではないという否定を、小学生のガキみたいにしていた・・・。