『たま ごめん』
それは捨て猫の入った段ボール箱にマジックで書いてあった。
飼い主の、身勝手ながらも無念さをも感じさせる一分である。この誠意を次の飼い主に求めているという事のようだ。
僕はこの古い漫画のような現実などよもや あるまいと括っていたが、それがこんなに厳しい現実に映るとは思わなかった。
どんな生き物であっても赤子は無垢。
赤子の内だけでも幸福に包まれていて欲しいと想うのは先に生まれた者の情。
でも猫は嫌いだし、拾う気などないが、しかし見過ごすのにいくらかの情念をグイグイと私は引きずっていた。
暫くしてふと気がついた。
フタのしてあるその箱のある場所。
それは開店前の中華店の軒下。
『...えっ!!玉子麺か!?』
― たまごめん 終。