私は一安の着信を無視した。
きっと一安は何も考えていない。
赤ちゃんが居なくなった事で、自由が奪われないで済んだ。
それが一安の気持ちだと、私は勝手に思い込んでいた。
私が着信を無視していると、一安は留守電にメッセージを残した。
「お前電話でろよ俺、もうどうしたら良いかわかんないんだよ。5分でいいから逢って欲しい。」
聞いた事のない一安の声。
一安が落ち込んでいるなんて、想像もしなかった。
次の日の夕方一安から、また着信がきた。
私はその電話に出た。
「お前何で電話出無かったんだよ」
一安は淋しそうに聞いてきた。
「だって、今更電話に出てどうすんの?って思ったから」
私は少し緊張していた。
「今から、逢いに行くから出て来て」
強引な一安。
「無理だよ。逢っても話す事ないもん」
私は、いつも一安に逢うと一安のペースに乗らされる。
「お願い。5分でいいから俺どうしたらいいかわかんないんだよ」
一安は辛そうだった。
私も辛かった。
私も本当は逢いたかった。
一安が私と同じ様に辛いなら、解ってあげられるのは私だけだと思った。
「ホントに5分だけなら、いいよ」
私は一安の気持ちを確かめたいと思った。
確かめてどうかなるという訳ではないが
確かめる事に理由はいらなかった。
私は一安との待ち合わせ場所に向かった。