私は先に待ち合わせ場所に着き、物陰に隠れた。
逢うと言ったものの、どんな顔して逢えば良いのか解らなかった。
5分位待った頃、遠くから聞き慣れたバイクの音が聞こえてきた。
一安だ。
その音はだんだん近づいて、私が隠れて居た物陰の傍で止まった。
そして、私が物陰から出て行くと一安が私に気付いた。
一安は私を見つけて微笑んだ。
「お前居ないから、バックレられたのかと思った」
一安は少し恥ずかしそうに笑顔でそう言った。
「5分だよ」
私は話しを本題に戻した。
それから、5分経っても話しは終わらず気付くと30分も経っていた。
「もう、ぜんぜん5分過ぎてるからあゆ帰るよ」
私は帰らないと、帰りたくなくなると思った。
「まだ帰んないだろ」
一安が笑顔で言う。
「だって、5分て約束したじゃん。もうすごい過ぎてるよ。」
一安のペースに乗らない様に必死だった。
「じゃぁ、やり直したい。つーか俺はお前と別れた気ないから、別れない」
一安はそれしか言わなくなっていた。
「無理だよ。やり直してどうすんの?もう遅いよ」
私が、そう言うと
「遅くねーよ」
一安がそう言う。
そんな会話を繰り返していると、雨が降り始めた。
「もう雨降ってきたから、帰ろう」
私は、帰ろうと言い続けた。
もっと一緒に居れば、もっと悲しくなると思った。
「帰んないよ。お願い今日だけだから」
一安はそう言って、バイクに乗った。
「ケツ乗って」
「なんで?どこ行くの?」
もうこれ以上、外に居たら雨でビショビショになってしまうから…
私は自分に言い訳をして、バイクに乗り、一安に捕まった。