場所を変えた一安は、やり直すと言わない私に違う提案をしてきた。
「じゃぁ、半年でいいから傍に居てよ。付き合わなくていいから。その間にお前の事忘れるから」
一安は自分勝手な人だ。
「なんで?一安の気持ちなんて、もう知らないよ。自分でなんとかしてよ。」
私は、また一安ガッカリさせられた。
結局、その日は喧嘩したまま、家に帰った。
一安と逢った事は、正樹には隠していた。
余計な事を言って正樹との関係を壊したくなかった。
五月の連休だった。
その日私は正樹と一緒に車で、出掛けていた。
目的地に着く前に、正樹がトイレに行きたくなりコンビニに寄った。
私は車の中で待って居た。
正樹がコンビニに入ってすぐだった。
正樹の置いていった携帯電話が鳴りだした。
私は電話なら教えてあげようと思い、正樹の携帯を手にとり開いた。
そこに表示されていたのは、明らかに女の名前だった。
【誰だろう】
私は、何と無くそのまま携帯を閉じて元の場所に戻した。
そして、すぐに帰ってきた正樹に
「携帯鳴ってたよ」
私がそう言うと、正樹は携帯を開きその着信履歴を見た。
「久しぶりだな、なんだろう」
正樹はそう言って、その女に電話をかけ直した。
すぐにかけ直せる相手なら、やましくないのだろうと思った。