心鬼(しんき)?

高柳美帆  2009-03-28投稿
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麗は鉄格子の向こうからする気配に気づき顔をあげる。そこには、慎介が不気味な笑みをうかべて麗を見ていた。麗は慎介を見るなり、恐怖のかけらも見せずに慎介に襲い掛かろうとした。自分を閉じ込めた男に。そして…鬼となりかけた自分を抑えられずに…。

諷哉にそこまで話した拓はキセルを カンッ と鳴らして灰を空き缶にいれる。
「…人喰い鬼になった心鬼は、誰一人として見境なく人を襲う…。ダチだろうが家族だろうが関係ねぇのさ…。」
諷哉は立ち上がり小屋を出ようとした。それを拓が呼び止めた。
「どこ行くんだ?まさか麗の所じゃねぇよな…?坊主。」
「もちろん、麗の所です…。俺…麗の事…助けたいんです。」
「…きれいごとも大概にしろよ。麗をあんなんにしたのは、おまえら…現代の人間だぞ。」
諷哉を半ば睨みながら厳しい言葉をなげつける。
そんな拓に、諷哉は言った。
「確かに…。麗も言ってました。…俺達の時代は…悪事が絶えない。多分俺がこうやって話している間にも悪事がおきて…泣いて、悲しんでる奴もいるかもしれない。だけど…そんな時代でも、ちゃんと手に入る物もある…。」
怪訝そうな目で拓は言葉を投げる。
「…じゃあ、お前は何を手に入れたんだよ?」
「わかりません。…今はわからないけど…俺、今言える事はこうだと思います。…大切な人を、言葉より大切にする事です…。」
「…いい言葉に聞こえるが…なんか物扱いにも聞こえるぞ。」
ああ言えばこう言う、といったぐあいに拓は反論する。しかし、諷哉はハッキリ言った。
「…俺は、そうは言ってない。でも、そう聞こえたなら謝ります…。」
拓は諷哉を視線から外しながら答えた。
「…麗を助ける方法がなくもないが…。」
それに、諷哉は身を乗り出したずねた。
「教えて下さい!俺に出来る事ならなんでもやります!」
「…お前が…人喰い鬼になった麗に勝てばいい。ただ、それだけだがな…。」
と言いながら難しそうな顔をする。諷哉はハッと大事な事を思い出す。麗が、学校の剣道で誰にも負けた事がない事を…。
「…麗の剣の腕は確かだ…。とてもじゃねぇが…。」
「でも!」
諷哉が拓の言葉を遮るように言葉を口にする。
「やらなきゃ、麗が戻らないなら…俺、やります!」
今、麗を元に戻すなら…これしかないのだ…。

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