初めて彼女に出逢ったのは
俺が中3のとき…そして彼女が中1のときだった。
「おはよー!」
「うぃーっす」
いつもと変わらない朝だった。
6月の朝…そう梅雨の小雨の朝…
15年経った今でもはっきり思い出せる朝。
他の中3の朝は全く覚えていないのに、その朝だけは鮮明に覚えている。
彼女を初めて見た朝だった。
同時に初めての一目惚れだった。
それからは学校で見かける度に思いは募り、なぜだか大勢のなかでも、すぐに発見できる。
ある日の放課後、体操ジャージを着て走る彼女の胸の名札を見て、やっと彼女の苗字を知った…
「長山」
ながやまさんか…
そっか、長山さんか。
不思議となぜだか嬉しかった。
彼女の頭の中に入っている苗字を俺の頭の中に入れることができた、ただそのことだけでたまらなく嬉しかった。
その翌日、1年生の下駄箱をさりげなく見てみた。
下駄箱にはフルネームのシールが貼ってあるのだ。
「長山…長山…」
…
あった!
他に長山のつく名前はない。
「長山香織」
彼女らしい可愛い名前だ!
下駄箱でさりげなくガッツポーズをしながら、嬉しくてこみ上げる笑いを噛み殺しながら、そう思った。