Monstars Da-Capo

キリン  2006-07-10投稿
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ウーは思わずびくり、とする。

「自業自得だぜ、魔女!」

「お前がこの村にやってきてから魔物が多くなった! おおかたお前が呼んだんだろう!」

「大体、お前の作った薬、あれはなんだ!? あんなに効くのはおかしすぎる!」

「お前は気味が悪い! いるだけ災厄なのさ!! さっさと殺されちまいな!」

ダ・カーポがにいと笑った。「そういうこった、魔女さんよ。おっと、呪いなんて無駄だぜ。俺には効かないからな。何せ、俺は光王シャイニの加護を受ける身だ!」

そう言うと、詠唱を始めた。
赤いオーラがダ・カーポの周りに渦巻き始め、炎術系の魔導だということがわかる。

炎は、怖い……!

慌ててウーはその場から立ち上がろうとする。
しかし、足がガタガタと震え、しかも義足がさっきの衝撃で外れかけていてそうすることは叶わない。

怖い、怖い……!

村人は誰も呪いを恐れて、ウーを押さえつけたりなどしはない。
けれど、炎と悪意が全身に絡みついて動けない。
王宮騎士団魔導師連師団長ダ・カーポ。
ルナン王国だけでなく、他国でも知らぬ者はいないくらいの英雄だ。
ただひとり、光王から直接の加護を戴き、強大な魔力を自由自在に操り、あのハーバリエの乱をたったひとりで治めたという。
その様はまるで悪魔のようでもあり、同時に神のようでもあったと、十年たった今でもルナンの人々の間で語り草となっている。
そしてエグロンの魔女ウー・ラシル。
ウーは何の魔力も持たない。
ウーはただ醜く、薬草の知識が他の薬師より豊かなだけのただの無力な娘だった。
目の前で大きく膨れ上がる炎。
涙が信じられないくらいに溢れてくる。

怖い……!

――ウー、早く逃げなさい!

――でも、おかあさん……!

――お父さんは私が探してくるわ。だから、ウーはここで待っていて。

――おかあさん! 行かないで、おかあさん!

――大丈夫、必ず戻ってくるからね……。

――おかあさん! おかあさぁあああん!!


ボォオウウッッ!!

前髪がちり、と焼けるにおいがする。
熱い! 苦しい!
ウーはぎゅっと目を閉じる。
もういい! もう苦しいのはいや!!

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