30分もしないうちに、美穂は遼一のおよその考え方がわかってきた。
それは桃子が質問攻めにしたからだ。
遼一はストレートに答える。
自分の容姿に興味がなさそうな遼一を見て、桃子はいらだっていた。
今までの人生にはない屈辱だった。
美穂が得た遼一の情報は、彼は三十七歳で既婚。子供が一人。奥さんは美穂と同い年だという。
身体を壊し、会社を辞めたらしい。人生いろいろあるものだ。
既婚なのは少し残念だが、遼一の魅力は、美穂にとって減るものではなかった。
むしろ話をする内に興味を増した。
遼一は、相手の外面を見ない。内面や本質を見抜く。
そして、ズルが嫌い。
美穂もそうだ。
だからと言って、そういう人間をことさら非難することはない。
最初から関わろうとしないのだ。
人生、オトシマエつけながら自分らしく生きようとするなら、そんな暇はないのだ。
遼一は後にそう語った。
桃子は少々焦っていた。
こんな男は初めてだ。