私は天野ユリ。ごく普通のOL。
朝の通勤電車、
いつものiPodの音楽。
何も変わらないいつもの朝。
…のはずだった。
ガタッ! 電車が揺れた。
つり革を持とうと手を伸ばしたら、先につり革を持ってた誰かの手を握ってしまった。
「あっ、すみません…」
謝りながら、少し顔を見上げた。(えっ?)見上げた先にスーパーアイドルの西島潤の顔があった。
彼は目深にキャップを被り、眼鏡をかけていた。 そして、下を向いて何やら携帯をいじっていた。もう一度確認したくなり覗きこむ。彼は、私の視線に気がついた。私は、慌てて下をむく。
彼は、携帯に何かを打ち込みだした。その後、そっと画面を私に見せた。
『何も言わないで。』
私は、心臓が脈打つのがわかった。 破裂しそうな気持ちを抑えながら、小さくうなずいた。
私のドキドキと激しい鼓動が彼に聞かれないかと更にドキドキした。
駅に着くアナウンスが流れた。
ドアが空いた瞬間、彼は私の手に何かを握らせ、足早に降りた。
私はそのまま、立ちすくんでしまった。
そして、手の中にある違和感を感じそっと開けて見てみた。
手のひらには小さなキャンディがちょこんと乗っていた。