拓は、諷哉をジッと見てから
「…わかった…」
とだけ答えた。
「…お前に、麗を助け出すように頼むが…いいな…?」
力強く…諷哉は頷く。
♪
(…諷哉…。)
麗は、横たわりながら目を半開きにしながら息をきらし、呟いた。
自分が小学校から諷哉に会うまで…周りの視線が本当に痛かった…。目つきが怖いという事と全く笑わないという事で、麗は普通の女子学生のように、話すような事はしなかった。だから、中学にあがった時は先輩からくるいじめに、始めは耐えていたが…ある日…我慢の限界に達し、斬ったのだ…。それ以来、麗は自らを傷つける者にも、容赦なく刀を向けるようになった…。
でも、そんな事があったが…あいつ…諷哉と会ってから少し変わっていった。いじめられなくなり…そして、麗の心の中の氷も溶けていったのだった…。
(…今…私が諷哉に会ったら…また…喰ってしまう…?)
――マモリ……タ…イ……――
(やだ…。諷哉だけは…諷哉だけは…!)
麗は、物心ついてから初めて涙を流しながら心で呟く。
♪
諷哉は拓から借りた刀を持って山のさらに奥を目指す。
(…麗…お前は大切な奴だ…だから俺はお前を助けたい…!…待ってろ…すぐ助ける!)
といった感じで諷哉は歩きつづけた。
「うわっ…文字どうり…なんか捕われてそ…。」
と諷哉は半日近く歩いて目の前に現れた建物を見て呟いた。
その建物は和風というより西洋風で、まるでお化け屋敷みたいな城のようだった。
諷哉は気合いをいれて扉を開ける。
ぎぃぃぃぃ……
と音を残して扉が開く。
目の前にホールみたいな空間に一つの大きな階段が、上に伸びそれぞれの部屋を導いている。
「…よう…。…わざわざ喰われに来るたぁねぇ…。くくっ。」
階段の真ん中に麗をさらった犯人、吉柳 慎介が立っている。誘拐犯の姿を見て諷哉は慎介に言葉を投げる。
「麗はどこだ!?麗を返せ!」
「返せ…か…かまわないが…できるかな…?」
といって指を鳴らす。すると右端のドアが開き、一つの影が現れた。その姿を見て諷哉はハッとして叫ぶ。
「麗!!」
そこには、冷たい視線を送っている麗の姿があった!