雑居ビル地下に入ると
薄暗く、異空間な世界があった。尚に指でつつかれ「あそこにいる。」指さされた先にはカウンターで客と話しているバーテンダーがいた。
細身で背が高く、あっさり顔の
かなりイケテる人。
「カウンター座ろ。」
尚を引っ張り、先客の横に座った。
「すみません。」
私は座りながら、ちらっと横の客に目をやる。
(えっ!?)
西島潤だ。
「まじ?」
私より先に声を出したのは尚だった。
「いらっしゃい。何にしますか?」
間髪入れず、イケテるバーテンダーが問いかけた。
「あ…カシスソーダ」
思わず答えた。
「私はカンパリオレンジ」
尚も答える。
私は、尚の恋路など忘れ、
左に座る西島潤しか意識してなかった。
「ねぇ。横にいるの西島潤だよね。握手とか言っちゃう?」
小声で尚が囁く。
「…うん…」
私は、勇気を出し
「握手してください。」
「…」
彼は何も言わず手を出した。優しい握手だった。続いて尚も握手を求めた。
西島潤は黙って手を差しのべる。その後、
「こちらのお客様もプライベートできていらっしゃるので…そこんとこ宜しくね。」
私達2人はこくりとうなずいた。