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帰り道――
あたしは、隣に立つ聖人に、さりげなく聞いてみた。
『ねぇ聖人。さっきのサチヨの話だケド‥‥ホントかな‥‥?!』
『あぁ。らしいゼ。
さっき成沢から全てを聞いた。
秋田谷と付き合っている男の名前は、K中3年 森宮ヒロキ。
ちなみに成沢がクサの栽培を始めたのも、森宮と付き合い始めてからだそうだ。』
『じ‥じゃあ、その森宮ってヒトが遊んでて、2股も3股も掛けてるって話も本当だってコト?!』
『おぅ。森宮は常に不特定多数の女と遊んでる様な男だ。
見た目はマジメだし、成績も良いと言うヤツだから、先公からは気に入られるタイプらしいが、裏では、ひでぇ悪さをしている様な汚ねぇヤツよ。』
『だ‥だってユカ‥‥あんなに嬉しそうだったのに。カレシが出来たって、すごく喜んでて‥‥。
したコトも無いメイクして‥‥。
渋川に目をつけられながらも、髪染めたり‥‥‥。』
言葉がうまく出てこなかった。
頭の中が整理つく前に、
怒りの感情が、先へ先へと口から飛び出して行こうとする。
これ以上話そうとすると、
涙が溢れ出そうになる。
『俺が成沢から確認出来たコトは、それだけだ。
成沢の言うコトが全て真実なら、成沢も森宮に遊ばれ、利用された被害者だと言うコトだ。
それより、秋田谷に早く目を覚まさせねぇとな。
困ったゼ。アイツ、舞い上がってるし、俺らの言うコト、素直に聞くタイプじゃねぇからな。』
カチッ――
煙草に火を点ける聖人の横顔を見て、
あたしも同感だって思った。
『ユカ‥‥結構気が強いし、カレシに夢中だから‥‥。
あたし達の言うコト、信用してくれるといいケド‥‥。』
ポンッ――
頭を優しく撫でられた――
『んな、シケた面すんなって!!
ま、俺よか、奈央‥オマエの言うコトなら、アイツは素直に聞くんじゃねーの?!』
いつもの笑顔でそう言われたら、
何だか心が落ち着いた。