アタシは、コウタのことが大、大、大好き。優しいコウタの笑顔と言葉に包まれて、ずーっとコウタの側に居たいの。
でも、実際はコウタの側にずーっと居られるわけじゃない。コウタはバイトに行くし、友達とも遊びたいし、パチンコにも行きたいし、一人になりたいときがあるの。
アタシの束縛が原因でコウタを苦しめていたようで、ケンカしちゃった。
コウタもアタシとずーっと一緒に居たいって言ってたのに、それはアタシの「ずーっと一緒」とは違うんだ。
あ〜ぁ、コウタのポケットに入って、ずーっと一時も離れず一緒に居たいな。
そう思いながらアタシは眠ってしまっていた。コウタに会いたいと涙をこぼしながら。
気が付くとアタシはゆれていた。周りは布のようで、暗いけど、外からの光が繊維の隙間から入っているのが分かる。
上を見上げるとでっかいコウタの顔。笑顔の優しいコウタ。
嬉しい!コウタのポケットに入れた。これで、ずーっと一緒。
するとコウタは、女の人と楽しそうに話している。笑顔はその人に向けられていた。手までつないで…デートみたい。
イライラ。
アタシのこと忘れてる?そっか。アタシがポケットに入っててずーっと一緒に居るから慣れちゃったんだ。恋愛対象じゃなくなちゃったんだ。アタシ、ピアスみたいに身に付けるものになっちゃったみたい。
アタシはコウタの身に付けるものなんかじゃない!そばに居なきゃいけない彼女だもん。
離れている時間って大切なのかも。胸の苦しみが愛を深めるのかもしれないな。
目が覚めると、コウタが居た。
「ただいま。会いたかったよ。」
コウタのアタシに向けられた、優しい笑顔。と、腕に包まれて、アタシはもう一眠りした。
涙で濡れていた枕はもう乾いている。
幸せ。