扉は大きさの割りに軽く、しかしいかにも重そうな音をたてゆっくりと開いた。
中は外ほど寒くない。
コートをその場に脱ぎ捨て、四人は神殿の奥へ進んだ。
シンとした神殿内に四人分の足音が響く。
「…にしても静かだな。」
「ここまで静かだと逆に不気味ですよね。」
ラウフの言葉に雪が相槌を打つ。
「イツキの事もあるしなぁ…あいつも来てるだろう」
「…はい。そう、ですね」
雪が僅かに瞳を伏せたのをラウフは知らない。
「よく来たね、雪。」
そう言って彼らを迎えたのは他でもないイツキだった。
「イ…ツキ……」
イツキを見つめる雪の瞳にいつものような光はない。
「雪、剣と宝玉を渡して」
優しい声でイツキが言う。
そんなイツキに雪が動揺してまうのは仕方のないことだった。
「…さあ」
「………。」
雪が俯く。
「雪」
「……ふ………」
「雪?」
「『降り注げ 白銀の刃』っ!!」
雪が叫ぶと氷で形成された無数の矢がイツキへと降り注いだ。
雪の攻撃行動にイツキは驚き、避けるしかなかった。
「……雪…」
「ごめんなさい、イツキ。
でも私は、シーラさんの時間を取り戻したい。」
雪の凛とした声が神殿内にしっかりと響いた。
今、彼女の瞳には僅かに、けれど確かに光が灯っている。