「確かに…」遼一は素直に認めた。
急に真顔になった遼一を見て桃子はちょっと引いた。
「俺は今までの人生、選択しなきゃいけない場面では、必ず、損をしないと思う方を選んできた」
美穂は共感する。自分もそうだからだ。
「でも、実際は、損しても、自分のやりたい方を選んだ方がやりがいがあるし、後悔も小さいと思うんだ」
遼一は語った。
やらずに後悔するよりやって後悔した方が良いと言う事か…。
確かに、何故かいつも自分は損してばかりいる、と美穂は思っていた。
しかし、それは摩擦を恐れるあまり、無難な選択をしていた自分に問題があったのか。
そして、遼一はそれに気付いていながら苦しんでいたのか…。
歳をとれば誰でも気付く事なのか…。少なくともセクハラ課長は、そんな風には見えなかった。
美穂は遼一がますます好きになった。