━━『秘密にしたいんだ。全部。』『秘密って何?』『俺とお前がこう言う関係だってこととか、これからしてくこととか…俺とお前はただのクラスメイト。それが条件。』『翔太がそうしたいなら、いいけど…』
━━こんな条件のせいで、半年、友達にも家族にも秘密を突き通してきた。ちょっとした、女優気分…?
『先に戻ってっからな。』『はい。わかったよ!』
━━ 条件が始まる前には必ず、翔太は自分と壁に私を挟めて長いキスをする。逃げない様に、きつく手首を握って。…口下手な翔太がする些細な優しさだと思った。
キスをすると魔法に掛ったみたいに、安心できる。
『ドコ行ってたぁ?』━━アイだ。『……保健室にちょっとね!』『そうそう!ダイくんなんだけど、どう思う?』『なんで?告られたの?』『えっ?!なんでわかるの?』『なんとなく…』『どう思う?』『いいんじゃない?優しそうだし、明るいし、人気者だし。…アイとはお似合いよ』『う〜ん…そうかな……もうちょっと考えてみる。』『他に気になる人でもいんの?』『いないから問題なの!好きな人いれば、ちゃんと断るけど、いないと揺れるって言うか…なんて言うか…でも、完全に好きでもないのに付き合うのって失礼でしょ?…だから…なんて言うか…』『いいじゃん、別に。付き合ってから好きになれば!ちょっと順番が変わるだけでしょ。』『冷静だよね…。あんたパニクってる所見たことない』『お誉めの言葉ありがと♪』
━━確かに冷静かもしれない。自分の身に何か起っても、客観的に見てしまう癖がある。
でも、人生で二度、泣きそうなくらいにパニクったことがある。
小学6年の時。一番上の姉が買い物中に倒れた時。さっきまで、あんなに元気だった人が倒れてる…。周りの人間は本当は冷たいこと。貧血で倒れただけなのに一瞬、もう「会えないかも」と思った。
それと、去年の卒業間近だった…。卒業式で答辞を読むことになってて。いつの間にか8時を過ぎて、学校を出た時には、もう辺りは真っ暗。いつもと変わらない帰り道だった。
思い出すだけで両手が震える。