クモの巣でクモをやっつけろ
外回りの仕事中、クモの巣によくひっかかる時期があった。
勿論、オーナー(クモ)がくっついてくる場合もある。
近所の住民を呼び出して、
『すみません!!僕の背中にクモがついてませんか!?クモ!!』
と叫んだ事もある。
クモが大嫌いである。青二才のくせに彼女のいる男より嫌いである。
あまりにひっかかるから、僕の前世は蝶々だったに違いないと思った事もある。
殺生など蚊以外はもってのほかという主義だが、そのうちもうこの際はクモにも泣いて貰おうという事になった。
という訳で、自分で作った糸に絡まって死んで貰う事にした。
早速クモの巣を見つけると、仕事は一時そっちのけで私は小枝片手にその巣に近付く。そして、
クルクルクルクルクルクルクルっ。
因果応報はクモにもあってしかるべき。これはクモの招いた結末である。私は宇宙の法則を実行させて頂いた。ざまぁみろ。
翌日、もう用もないのにその現場に恐る恐る足を運び、一体クモがクモの巣にひっかかったらどうなるのかを確認しに行ってみた。行き交う蝶々達に笑われながら悔し涙で絶命した事だろうなどと想うと、やはり私の前世は蝶々かと思った。
結果、元通りになっていた。
それがクモの仕事なのだ。
でもなんだかスッキリした。
―クモの巣でクモをやっつけろ 終。