『カミヤ君』
それは、同じクラスの男の子。
影ではクールだと評判がいい。
女子に話しかけるようなタイプではない彼が今、私に話しかけてくれている。
「何をそんなに驚いてる?」
彼は屋上入口付近に座って本を読んでいた。
「だってカミヤ君がいきなり話しかけるから!」
本に向けていた顔をサヤカへ向けた。
その顔は整っていて、かなりかっこよく思えた。
あぁ、きっとカミヤ君みたいな人はコウタみたいなことはしないだろう。
そんなことを考えてしまう。
「サヤカ…」
「はい!?」
「この本の主人公と同じ名だ。」
「…え?」
私は、本を覗き込んだ。
「何の本?」
カミヤは本に視線を戻し。言った。
「恋愛小説。サヤカという女の子と幼なじみとが恋に落ちるんだ。」
(サヤカと幼なじみ…)
嬉しくなった。
まるで、私とコウタが恋に落ちるようだと思えた。
「カミヤ君も恋愛小説読むんだ。」
「あぁ…」
それからもう少し詳しくストーリーを教えてもらった。
「その本読み終わったら貸して!」
カミヤはあっさりと
「うん」
と、言ってくれた。
(結局、午後の授業出てないな…)
そんなことを思いながら家に帰ってみると、家の前にはコウタが立っていた。
コウタは私を見るなり
「遅い!」
と、一言だけ言った。