ロイは震える声でそう言うと、その場に座り込んで顔を手で覆った。
その後ろ姿を見ていたロザラムは一つ小さく息を吐くと、ラトの元に歩み寄り、持っていた剣を鞘に収めて彼に手渡した。
「…うむ」
ラトは小さく頷きながら、その剣を受け取った。
ロザラムは騎士のネックレスもラトに手渡すと、エミリアの方に顔を向けて、
「エミリア…さよなら」
と、言いながら静かに微笑んだ。
「…!」
エミリアはその言葉の意味が分からずに戸惑いの表情を浮かべたものの、ロザラムの腕を騎士達が拘束するのを見て、初めてそれを理解した。
「ロザラム!」
エミリアは目に涙を溜めながらロザラムの側に歩み寄ろうとした。
「エミリアさん…」
ラトは歩み寄ろうとするエミリアの前に出ると、悲しそうな表情をしながら一つ小さく首を振った。
「ああ…!」
エミリアは絶望したような表情になってポロポロと涙をこぼしながら、その場に泣き崩れた。
「姉さん…」
ミリスはエミリアを後ろから抱きしめて、同じく涙を流した。
ルイスとリリーは悲しそうな表情で、小さな泣き声を上げているロイ、ミリス、エミリアを見つめていた。闇夜から降り始めた小さな雨粒が、涙のように落ちては消えていった。