そして、同じ顔の人間が二人。
憂牙とレメクと名のる男は、しばらく互いの顔を見合わせる。憂牙はフッと小さく笑った。
「‥悪いが、お前の相手をしている場合では無い」
憂牙はゆっくりコートの中に手を入れた。
風が変わった。何か無数の気配がする。
「‥誰か居る!」
「‥囲まれたか」
クロムが周りを見渡した。レメクもその状況に気がついた。
それは、ジワリ、ジワリ近付いて来た。三人、いや、六人。いや…十人。影はやがて姿を現し、ねずみ色のマントが複数、風になびいていた。マントに隠れた両腕からは、40cmはある、長い大きな針のような物が見える。そして、一斉に襲って来た。
憂牙はコートの中から、白い玉を取り出し、地面に叩き付けた。
ボン!という音と共に、白い煙が吹き出した。
「なに!!」
「・・・・!?」
レメクとマントの男達は、白い煙に視界を奪われた。立ち込める煙の中、二つの影が消えた。
「まっ・・・!」
薄れていく影を追うレメクの前に、マントの男達が視界をさえぎる。
「‥邪魔だ‥邪魔だ‥邪魔をするなーー!!」
時折、風が運んで来る雲に、太陽が見え隠れする。
太陽が隠れたこの場所は、薄気味悪く、30年という時の流れによって出来たパイプのゆがみに風が当たり、カタカタと音を鳴らしていた。
さっきまで立ち込めていた煙は引き、そこには一人の男が立っていた。
右手に拳銃。左手にナイフ。ナイフの先からは、赤黒い液体が地面にポタポタと流れ落ちていた。
周りを見渡すと、ねずみ色の10体の塊と、赤黒い液体が無数に飛び散っていた。
「‥お前に会うために10年‥10年も掛かったよ‥憂牙」
両手にある銃とナイフが地面に落ちる。
レメクは、赤黒い液体がべっとり付いた両腕を見た。そして強く握り締めた。
つづく