【残された時間〜遺言】
16日間の入院生活を終えて帰宅した俺を待っていたのは 病人のいる家庭とは程遠い生活環境だった
ろくに学校に行ってないガキは すっかり昼夜逆転の生活スタイルが身についてしまい パソコンに興味を持ち出したから 連日夜遅くまで俺の部屋に居座りしパソコンいじりをしていた
ガキがそばにいるもんだからまりもにメールできなくなってしまったが まりもは理解してくれた
それだけでも ストレスがたまるのに ガキが「〇〇してくれたら学校に行ってあげる」だの「〇〇に連れてってくれたら学校に行ってあげる」等の無茶苦茶な交換条件を出して来たし
嫁をそれを容認した
もう我慢出来ない…
限界だ…
俺は時間の許す限りまりもと会った
激しい行為は出来なくなってしまったが 二人きりになれる場所に何回も足を運んだ
二人でおしゃべりしたり
二人でテレビ見たり
二人でご飯を食べたり
二人でお昼寝したり
何度もそんな形のでーとを続けていたが、秋風が吹く昼下がり…「なんだか夫婦になったみたいだね」と微笑むまりもを見て 俺は思わず口に出してしまったんだ
「俺とまりもの子供の顔
見たかったなあ」って…
「きっと 丸い顔でポチャポチャした子供だね…」と言いながらまりもの目からは涙が溢れていた
俺の目からも涙が溢れて止まらなかった
俺は まりもを抱きしめながら叫んでいた
「まりも これからぱぱは変わるから 昔の優しいぱぱに変わるからぱぱと仲良くして!」
「俺が死んでも 他の男のとこに行くなよ!俺はずっと見てるんだから絶対に行くなよ!」
それから5日後だった
俺の全てが終わってしまったのは
俺達 心底愛し合ってたのに夫婦になれなかった
愛する女性との間に産まれた子供の顔を見たかった
それよりも 何よりも
最愛の女性に最後のお別れをさせて欲しかった
それから4ヶ月間
俺の魂はさまよい続けた
居場所を求めて 暗闇の中をさまよい続けた