心鬼(しんき)?

高柳美帆  2009-04-03投稿
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麗は、無表情だけど優しい表情を再び表して諷哉を見ている。
「…ありがとう…諷哉…。」
麗は、そっと微笑んで諷哉に言った。諷哉は驚いて目を見開いた。今まで笑った覚えのない麗が、今初めて笑顔を見た気がしたからだ…。しかし、麗はすぐに無表情に戻りクルリと振り返り慎介を睨む。
「…吉柳慎介。私はおまえを許さない。」
「…八つ当たりか…?麗…。自分が囚われて、大事な奴を殺そうとした腹いせに…。」
無表情のまま、麗は答える。
「…違う…。私が囚われたのは私の油断から招いた結果だ…。それを他人にあたるような事はしない。…でも。…おまえのような ギザ は、罪のない奴までも殺した…。それを反省しようともしない。それが、許さないんだ。」
「おおっと…そこか…。」
慎介はポソリと呟いてニヤリと笑った。麗は刀の切っ先を向けてハッキリ言った。
「おまえに浴びさせる言葉は『斬るよ?』じゃない……。」
――ぶった斬る!!――
ギラリと目を光らせて、麗は告げた。慎介は麗を睨みながら笑った。
「おもしれぇな…。ギザと心鬼どちらが生き残れるか…比べようじゃねぇかぁ!」
と叫びながら刀を振り下ろす。麗は刀を横に構えて態勢を立て直す。
襲ってきた刀を弾き返し刀身同士を擦り合わせたような音をだし、慎介の方へ刀を滑らせる。慎介は鍔(つば)で受け止め麗の腹めがけて刀身を向ける。麗はバックステップで避ける。
互いの刀身が ギリギリと音をたて、火花を散らす。
「心鬼、麗よぉ。おまえ…今は人喰い鬼から目覚めたが、罪人を斬るとまた目覚め始めるぞ…?鬼になぁ!!」
「…かもね…。でも、誰かの為に戦う大切さを……あの馬鹿から…おそわった…。だから…私は…私をここまで育ててくれた拓じぃと…私なんかの為にここまで来てくれた諷哉…そして…私を産んでくれた父様と母様に失礼のないように…自分がしっかり生きる為に…戦う!!」
慎介は喉の奥で笑い、答えた。
「じゃ…俺はおまえを再び人喰い鬼にする為に戦うとするか…。」
そう言って刀で鋭く突く。麗は体をひねらせてそのまま蹴りあげる。二人は距離をおき、互いに刀の切っ先を相手に向けて、睨み合う。しばらく間が空き互いが地面を蹴る。二本の刀がそれぞれの相手を貫いた…。
「麗!」
諷哉の声が響く…。



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