猫の手11 言葉と仮面

猫の気持ち  2009-04-03投稿
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話は大分尽きてきたのか、ワンパターンとなってきた。猫の手にまつわる訴えから始まった独白だったが、昼寝にまつわる話となったら、何となく普段の猫に戻りたくなった。

簡単にまとめれば、吾輩は猫である。人とは見方が違う。それは、態度や行動が違っているが故、違って見える。人からの信頼度が違っているが故、違って見える。実際、暢気で普段は寝てばかりと人とは違った態度、行動なので、見方も人とは違っている。またそれにまつわる不評にも拘わらず、人とは違って一応は天性と認められているがため、人とは違う見方が備わってくる。

見れば、何と言ったことはない。人は時流に合った言葉の効果で生きている。人はどこかに所属しているならば、時には自らが受けてきた言葉の効果により、今度はその効果を発する立場となる。人は人を知らずに生きている。人は自らが知っていると思っている事柄で生きている。

今やこの世は「言葉の効果を仮面から覗き合う集会」のようだ。仮面の裏側で互いに同意仕合う小集団が、他の人々へ向けて言葉の効果を発している。しかしそれを見抜くのは極一部の人達である。大多数がわからない群集心理を内に秘めた技を巧みに使う者、彼はたとえその技を見抜かれても、極少数であり、手に届かないと知っている。彼の笑顔と澄まし顔には特徴がある。それをわかるのも極少数かも知れない。

こうした事情は人の好き嫌いの感情が関係していて、もし嫌いと思う人がいた場合には、自他双方の社会にたいする見方が深く関わっているとだけ記しておく。

効果ある言葉と効果なき言葉。それは時代や文化などに左右される。最近使われ始めた言葉の数々、それはどんな効果をもたらしているのだろうか? またどんな種類の言葉を聞こうとしていないのだろうか?

もしあらゆる言葉を聞こうとすれば、疲れ果てるだろう。だから聞きたくない言葉は、みんなと合わせて上手に無視しよう。みんなが評価し始めてから聞き始めればよい。効果ある言葉に対面してしまったら、迷うことなく、効果ある言葉を使う側へと向かおう。




「言葉の効果、利益は誰に?」




偉そうに上から目線で申し終わったところで、吾輩は爪を引っ込めたい。今後はいつもどおりの澄まし顔で見る番であり、あと残された吾輩の任務は、亡き人から預かった宛先不明のハナミズキを届けることしかない。



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