お前がいたから?-?

デルDASH  2009-04-04投稿
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最初はもうダメかと思った。
見たこともない美少年と少女マンガチックな出会い方をして、呆けていたこと約一分。
この痛すぎるタイムロスに絶望しながらも、五臓六腑に鞭打ちながら駆け抜けた結果、なんとか俺はチャイムが鳴る五秒前に教室に着くことに成功した。
ゼイゼイと肩を上下に揺らしながら、曲がりなりにも無事に教室に着けたことを、俺は何かに感謝したい気分だった。
息も絶え絶えに、俺は自分の席に着く。
汗で制服が体にくっつく感覚は気持ちの良いものではなかったが、開いた窓から吹いてくる風は、俺の火照った体にはちょうど良い。
俺の席があるのは右手にある廊下側の一番後ろの右から二番目という、最高の端っこの席である。
なんという素晴らしい席だろうか。
席に座ると、ちょうどショートホームルームの始まりを告げるチャイムが鳴った。
それぞれのグループで会話を楽しんでいたクラスメイト達もぞろぞろと席に着く。

「おはよう、メガネマン。今日はギリギリだったな」

そう俺に声をかけてきたのは、小学校時代からの腐れ縁の芳川速人だった。
俺の前の席に座る芳川は、非常に遺憾ながら容姿端麗で、モデルの誘いも過去に何度か受けたことがあるほどのレベルなのだ。
成績もどちらかといえば優秀なほうで、スポーツ万能。
女子生徒の人気もかなり高い。
ファンクラブもあるらしいではないか。
羨ましいことこの上ないぞ。

「おう、おはよう。いやぁ、ホント今日は死ぬかと思った。というかメガネマンと呼ぶなって」

「良いだろう別に。減るもんじゃないんだし。お前のファンクラブの子達だって、メガネマンって呼んでるし」

おいちょっと待て。

「ファンクラブ?誰の?」

「お前だよお前」

いやいや冗談は止してくれ。
こちとら全力疾走のせいで足がプルプルしてるんだ。
あまりおかしなことは言わないでもらおうか。

「まさか知らなかったとはなぁ」

「ちょっと待て。詳しく話をーーー」

と言いかけたところで、

「はーい、ホームルーム始めるわよー。席に着いてー」

と、教室に入ってきた我らが担任、西園ゆかり先生がその通る声で言った。



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