終電がなくなるからと先に店を出た
『途中まで送るよ』と貴方が席を立った
貴方はやっぱり優しい
やっと二人になれた
だからこの機会に次の約束でもしたかった
だけど自分の中で勘違いはしてはいけないと歯止めを効かせた
車にぶつかりそうになった私の腕を貴方が掴んだ
その一瞬の優しさが胸を痛めた
その勢いで手を握れたら
このまま何処かへ連れ去ってくれたら
その行動にいちいち反応する自分が情けない
だから言った
『お兄ちゃんみたいですね』
これは自分の想いに対するカムフラージュ
貴方はただ笑った
『皆さん待ってるだろうから此処でいいです』
だってこれ以上貴方が隣にいたら私はどうにかなりそうになる
『大丈夫?』と心配する様な目を振り払う様に
『今日はありがとうございました』と別れの言葉を告げた
素敵な時間を過ごした
次会う時は離れ離れ
もっと話したかった
もう少しだけ隣にいる時間が欲しかった
どうしようもない我が儘を胸に抱いて一人で歩いた
いつも以上にお酒を飲んだ
だけど記憶が鮮明なのは
貴方の寂しさを見たから
酔えなかったのは
貴方の存在がそこに有ったから
帰りの電車で涙が零れた
周りの人に気付かれない様に懸命に涙を拭った
まだこんなにも貴方を想っている