思い出の足跡(26)

優風  2009-04-04投稿
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三月、最後の土曜日、僕は憂鬱な気分を引きずるようにして休日出勤をした。初めての事ではなくたまにある事だから別に珍しい事ではないのだが何故、僕の気持ちが塞いでいるかと言うと美香と会う約束をしていたのが丸つぶれになったのが一番の理由だ。僕は仕事が入った事を美香に電話で報告し、仕方なくキャンセルした。美香も“それじゃ、仕方ないね”と残念そうな声で言った。そのがっかりしたように発した言葉が逆に僕には少し嬉しかったりした。 あれから一度だけ会って夜、食事をした。その日は食事だけしてお互い帰路に着いた。もちろん、舞にはバレないように夜勤勤務帯を狙っての密会だ。 時刻を見ると午後の一時を過ぎていた。僕は昼食にしようと一旦、会社を出た。土曜日という事もあって社員食堂も閉鎖されているからだ。僕は会社の近くのコンビニへと足を向けた。
コンビニに入るとまず雑誌コーナーに足を運ぶ。もうこれは癖みたいなものだ。好きなタレントが表誌を飾ってる雑誌に手を伸ばし立ち読みを始めた。雑誌を半分ほど読んだところで僕は目を見張った。そこには“恋人同士で行くと必ず結ばれ幸せになれる海岸”というスポットが写真と地図及び説明が一緒に載っていた。僕は書かれている内容に目をとうし、最後に占いのページを読んで立ち読みを辞めた。少女趣味と思われるかもしれないが僕はこういったジンクスや占いにとても弱い。非常に左右される人間なのだ。それから、その雑誌と弁当、お茶を買って会社に戻った。


コンビニ弁当を食べ終えて喫煙室に行きメンソールのタバコに火をつけた。“すぅー”と深く吸い込んだ後、白い煙りを吐いた。前は風邪等で喉が痛い時だけメンソールのタバコを吸っていたのだがいつからかこの“はっか”の味が癖になりもう何年も愛煙している。


三本目のタバコに火をつけようとした時、携帯電話が鳴った。美香からのメールだった。内容は“もし早めに仕事が片付いたら一緒に食事でもしない?”と、お誘いのメールだった。僕はOKの返信をしてすぐさま喫煙室を出て残りの仕事に取り掛かった。僕が、買った雑誌の占いには“恋愛運は急上昇中です。意中の人と急接近して親密な関係が築けるでしょう”と書かれていた。単純で占い好きの僕はその内容を信じ込んでいた。



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