私はとっさに記憶がない振りをした。
その方がいろいろ聞いても不思議じゃないから。
「あの…ここは」
「私の屋敷だ」
「お名前は…」
「織田と申す」
…織田?まさかね…
「織田信長?」
するとその人は笑いだし
「記憶がなくともわしのことは知っているのか」
えっ?待って…待って!
「嘘…ありえない」
慌てふためいている私が面白いのかその人は笑い
「気に言った、しばらくおるがよい」
「はぁ…」
もちろん行く先も宛もないけど、どうなるの?
屋敷にお世話になって2日
以前とし何故こうなったかわからないままだ。
ただ、信長は私のイメージとは違い、優しい。
「入るぞ」
「はい」
「気分はどうだ」
「大丈夫です」
「そうか」
こんな感じで、ちょくちょく顔をだしてくれる。
着物や、身の回りを世話してくれる侍女も用意してくれた。
「名前なのだが、」
「はい…」
「お濃はいかがじゃ…」
「お濃…」
ん?待てよ?正室の名前…っていうか斎藤道三の娘?本物は?
「濃姫は逃げたみたいじゃ」
私の不安気な顔を見て、信長が祝言の後、姫がいなくなったのだと説明し
「やはり、うつけの嫁は嫌なんじゃろう」
切ない顔をしていた。