‘好き,
君にちゃんと伝わってましたか?
ざわざわと騒がしい放課後。校舎裏に二人はいた。
「あの…っえっと…あたしね…し、春の事…好き、なんだ…」
鈴宮 紫乃(すずみやしの),14歳。人生初の告白は,
「…で?俺にどうして欲 しいわけ?」
‘成功,とは言えなかった。
――――――………
「何それ…春(しゅん)最低じゃん!ちゃんとした返事聞いて来る!じゃないと紫乃すっきりしないでしょ?!」
「あっ恵(けい)!ちょっと待っ…」
紫乃の親友である朝行(さゆき)恵は,最後まで紫乃の言葉を聞かず玄関を飛び出した。
「…恵は早とちりすぎ…ちゃんと…でもないけど返事貰ったのに…」
――数十分前――
「…で?俺にどうして欲しいわけ?」
「えっ…だから…返事…して欲しいなって…」
紫乃と春の間に沈黙が流れた。
気まずい空気。生徒達の声だけが紫乃の耳に届いていた。
「…来週…返事出すから」
突然響いた春の声。紫乃は反射的に顔を上げる。
「あっうん…っまっ待ってるから…じゃあっ」
鈴宮 紫乃,14歳。人生初の告白は‘失敗,でもなかった。
――――――………
「紫乃っ!もうー…あたし恥かいたじゃん!春ちゃんと言ったって言うから…先に言ってよっ」
あの後紫乃は 恵が待っていた玄関に行き,今に至る。
「…あたし?…恵が話聞かずに行っちゃったんでしょ…」
紫乃の言葉に恵は苦い顔をした。
「あー…うんごめんごめんっ!で,春はなんて返事したの?」
全く反省の色を見せていない恵に飽きれながらも紫乃はさっきの事を話した。
「来週,ねえ…んー…なんて微妙な答え…」
「そんな事言わないでよ…自信無くす…」
暗くなる紫乃の顔。元々仲が良い友達だった二人だから,それ以上の関係にはなれないんじゃないかと思っていた。
「だっ大丈夫だって!それに仲良いんだから春の性格知ってるでしょ?あいつは中途半端な事はしない。ちゃんと返事出してくれるよ…」
それくらい知っていた。知っていたから怖かった。
「うん…そうだね…」
―――これからどれだけの涙を流すかなんて,想像もしていなかったんだ…
春,本当に届いてましたか…?
‐1END‐