『母はどうしましたか?僕はどうすればいいですか?』
虚ろな意識の中、覚醒した僕の第一声だった。
看護師から(母は軽傷でもう帰ってしまった事、僕は覚醒しきってないし、酸素吸入も、まだ治療もしなければならない事)の説明を受け、母さんが戻らない事を確信した。
母が死を選び、実行しようとしているのを、止める理由も、懇願も‥
僕には持ち合わせてなかった。
未成年の僕に出来た事は、母と同じ薬を飲み、同じ焼酎を飲み、同じ排ガスを吸う事だった。
一人にはなりたくなかったし、したくもなかった。
僕の唯一の家族なんだ‥
何度か、起き上がろうとしたが体が抑制されていた。
抵抗しようのない眠気に逆らう気もなかった。
何も考えずにいられる眠りの時間を、歓迎していたのかも。
「母さん。
僕も理由聞かれた時、死にたいからって言ったよ。母さんは僕を置いて一人で逝くの?
何故?そんなに急いでいるの?」
一人になりたくない。
誰か教えて‥
僕はどうすればいいですか?
母さん。
僕はどうすればいいですか‥
もう一度、声に出して言ってみた。
『僕はどうすればいいですか?』
その声は、看護師の記録に書き留められた。