ぞうき林からコンビニまで少し距離があった。歩いて二十分程だ。コンビニでコピーしてから交番を見つけた。エロ本の事は言わずただ、学校帰りにぞうき林で見つけたのだと大豆が代表して説明した。お巡りさんからはお礼と“寄り道せず早く帰るんだよ”と注意を受けた。ボク逹も、
「さようなら」
と、言って交番を後にした。交番を訪れた時、きゅうりだけがあいさつ時に敬礼をした。とんだお調子者だ。
「本当に宝物のありかを示してたら面白かっただろうなぁ」
ボクが言うときゅうりも、「本当、本当。金、銀ざっくざく」
と、話しに乗ってくる。
「あのプリントには絶対そんな事書かれてないよ」
三人の中で一番落ち着いてる大豆が冷静に言い放つ。大豆に言われてきゅうりも納得したのか“それもそうだなぁ"とぶきっちょ面で石ころをけりながら相槌をうつ。
「でもさ、もし本当に宝物や大金が手に入ったらどうする?今みたいに交番に届ける?」
「その時にならなきゃわかんないけど大ニュースは間違いないだろうね」
「って事は、テレビや新聞に取り上げたられたら一躍有名人になれるぜ」
一番、前を歩いていたきゅうりがボクらの方に向き直って声のトーンを上げてはしゃぐ。
「大金が入ったらボクは貯金するかな」
ボクの発言に、
「お前、夢がないなぁ」
と、きゅうりが言う。
その時、T字路から出てきた車ときゅうりが接触しそうになった。車は曲がる為、スピードこそ出してなかったが“キキィー”と激しい急ブレーキの音をたてて止まった。驚いたきゅうりはその場でへなへなとしりもちをついた。黒いセダンの乗用車だった。
「おい、くそガキ。どこに目つけてんだ」
運転してた黒いスーツをまとった若い茶髪の男が窓ごしに罵声を発した。その後、後部座席のドアが開き中からこれまた黒いスーツの長身の男が現れた。
「ケガはないか?」
男は低い声でそう言った。「は…はい」
きゅうりが蚊の泣くような声で返事をする。
「ちゃんと前を見て歩けよ」そう言うと男は車に元の後部座席に乗り若い運転手は車を発進させた。
「大丈夫か、きゅうり」
大豆と一緒に声を掛けると少し放心状態のきゅうりが「…オレ、死ぬかと思った」
と、やっと絞り出したような震えた声でボク逹を見ながら言った。