小学校から教科書には彼の名前がある。
泣かぬなら殺してしまえホトトギス
彼はとても冷徹で残忍極まりない戦国武将として有名だ。
だが、今私が世話になっているこの人は違う。
花嫁に逃げられて切ない顔をしている。
「探さないの?」
「探した」
「…そう。いい名前ね」
すると信長は切なく微笑んだ。
何故こうなったかとかよくわからないが今はなんだかこの人の側にいたい。
私も傷ついた。
言われもない罪を押し付けられ、彼氏には振られ…
なんだか空っぽになる気持ちわかる気がする。
それから毎日、信長は私を外に連れ出す様になる。
信長はあまりもの言わぬ人だから二人とも黙っていることが珍しくない。
だけど沈黙は全然苦痛じゃなかった。
「濃姫様」
家臣の人は私をそう思ってくれている。
なんだか居心地がよくなって私はこのままここにいたいとすら思い始めていた。
「お濃」
その日は珍しく信長が出陣の格好をしていた。
「どうなされたのですか?」
「そちの兄上が父上に謀反を起こした」
もちろん私のではない…
「行かれるのですね」
「道三には恩義がある」
「どうかご無事で…」
私は祈る思いだった。