「そうねぇ、アンタの場合、元はいいんだからメイクとファッションね。あとは性格改善」涼子は言った。
「それがわからないんだってば…。雑誌とか見たけど、全部同じに見えるの」
美穂は正直に言った。
「メイクもファッションも誰かに気に入られたいのなら、その男の好みに合わせればいいんだけど…」涼子は観察するように美穂を覗きこむ。
「遼一さんの好みかぁ…分かんないよ。一度しか会った事ないし…」
「遼一っていうのね、その人。一目惚れ?かぁ〜、若いねぇ美穂ちゃん。うらやましいぞ、そのウブさ」
美穂は真っ赤になった顔を両手で覆い隠す。
「じゃあ、好みに合わせるのはナシね。自分に合ったスタイルを見つける事。今のアンタは地味すぎ。雑誌の真似したってダメよ?メガネもコンタクトにしよう。あ、でもメガネ萌えもあるから、時には武器にするように」
メガネモエ…?ああ、萌えね。なるほど。勉強になるなぁ。
「雑誌の表紙を見たって?アンタの見たのは、多分、十代の娘が読むようなヤツでしょう。あんなの参考にしちゃいかんよ。メイクなんて厚く盛ってナンボの世界よ、アレって」
えっ?そうなのか…。みんな同じ顔に見える訳だ。
「とりあえず、私の服をいくつかあげるから着てみなさい。そして街に出なさい。外の世界に出るのよ。性格改善の為にも」
それにしてもネガティブまっしぐらの妹がこんなに変わるなんて…。いい恋してるのね。私も会いたくなってきた。
「どんな人なの?遼一さんって」
「えっと、37歳で子供が一人いる…愛妻家。奥さんワタシと同い年」美穂はスラスラと言った。
涼子は、めまいがした。