腐乱することこそが知識の本質だと気づいたのはどれほど前だったろう。恐らくは中学を次席で卒業した後、地域のトップ高校での成績に重い影がさしかかってからずいぶんと経った時分であろうか。
土木現場の昼休み、タバコをふかして遠い日のことを振り返る時の哲也の目は虚ろながら、芯の部分には強いものがあった。カラッと小麦色に焼けた顔には、文字どおり勉強漬けであったあの頃の面影はない。「ここで働きだして・・・もう16いや、17年かあ」まるで他人事のように呟き、ため息と同時にタバコの煙を吐き散らした。「17」・・・高校を飛び出してかた歳であり、親から勘当を受けた歳でもある。そんなことを思いつつ、晴れ渡る空を見上げ、またタバコをふかすと、未練がましくまた記憶が沸き起こってくる。なんとも喧しい(やかましい)工事現場の騒音にかき消されそうではあったが確かに聞こえた。`あの頃`が鷹揚な声で「忘れてくれるな」と呟くのが・・・(続)