次の日、学校に行くと何事もなかったようにドッヂボールをしているきゅうりの姿があった。日頃、親や先生達が“車に気をつけなさい”と口うるさく言うのが分かった気がする。きゅうりはと言えば、
「あんなのなんて事はないさ」
と、涼しい顔をして言う。おまけに他のクラスメイトにまで
「オレ、車にひかれそうになってさ。もうすぐで死ぬとこだったんだぜ」
なんて自慢気に話してる。まるで反省の色が感じられない。ボクも大豆も心配して損したという気分と同時にまた、安堵感も覚えた。
昼前から雨が降りだした。天気予報では七〇%の確率で降ると言っていた。予報は的中した。雨のせいで昼休みはグラウンドに遊びに行けないきゅうり達はぶーぶー文句を言ってる。
「雨なんか降ってなかったら今頃、ドッヂしてるのになぁ」
「今日は体育館で遊ぶのは低学年だしね」
ボク達の学校は雨が降ってグラウンドで遊べない場合は学校側が生徒達に体育館を提供してた。第一、第三の週はボク達高学年で第ニ、第四週低学年と決まっていた。そして、今日は第三の週で低学年が体育館を利用する日だった。
「つまんないなぁ」
ため息をつきながらきゅうりが嘆いた。
「トランプでもしよっかぁ」
そう言ってボクはかばんからトランプを取り出した。本当は学校にトランプの持ち込みは禁止されていたがこんな日の為にいつもかばんに常備してた。
「何しよっかぁ?」
「ババ抜きでもやろうよ」
「定番だね」
大豆が白い歯を見せてニヤリと笑う。それからボク達はババ抜きをし、次にポーカーフェイスをやった。運のないせいかポーカーフェイスは一度も勝てないまま昼休みを終えるチャイムが鳴った。
「あぁ、もう休み時間終わりか。なんかあっという間だったね」
「コアラ君、ポーカーフェイス一度も勝てなかったな。ダメじゃん」
勝ち誇った顔できゅうりがボクに言ってきた。確かに連敗街道をしたボクは返す言葉が見つからず、
「あぁ、掃除の時間だ」
と、ごまかして話題を変えた。
「面倒くさいなぁ」
大豆もボクに同調して相槌を打った。
ボク達の小学校では一年生から六年生までが男女ペアになって計十二人で掃除を行っていた。ボクの掃除区域は図書室だった。教室を出て図書室に向かう途中廊下から窓の外を見ると雨はより一層激しくなっていた。