吉原桃子は焦り始めていた。何故、この石川遼一と言う男はオチない?
私の、この風船のように膨らんだ胸…。もっと見てよ。マシュマロみたいに柔らかいんだから。
お尻だって、ゆで玉子みたいに滑らかなのよ…。
どうして私に会いに来ないの?
今まで、こんな男はいなかった。中学生からオヤジまで私の魅力に勝てる男なんかいなかった。
遼一にメールを送ると、きっちりリプライはある。どんな質問をしても、ちゃんと答えてくれる。なのに、二人で会いたいと言うとキッパリ断られる。
しかもすごく優しく。小さな子供をさとすように、私を傷つけないように、女心を傷つけないように。
ムカつくわね。何様のつもりなの!
家庭があるから?
いいえ、妻子持ちだろうが金持ちだろうが、私に落とせない男なんていなかったわ。
あの真っ直ぐな視線…。
私の体なんか、きっと見ていない。神野美穂みたいに冴えない女と、この私を同じように扱っているのが、その証拠。
許せない…。
自分は何をムキになっているんだろう?
あんな中年相手に…。
桃子は携帯電話のディスプレイを見つめて、ため息をついた。
初めて私の内面が見られている…。恐らく間違いないだろう。そう思った。
ファッションもメイクも私は完璧。ネイルだって…。
じゃあ、中身は…?
桃子は自分が分からなくなってきた。
レースまで、もう時間がなくなってきた。