ボクのあだ名はコアラ君(2-1)

優風  2009-04-08投稿
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「これから席替えを行います。くじを引いたら番号の席に移動して下さい!」

学級委員長の“田島康明”が黒板の前に立ってクラスメイトに指示を出す。教卓の上にはくじが入った箱が置かれていた。康明の指示に従って皆が席を立ちぞろぞろと教卓の前に集まりくじを引いていく。皆がくじを引いた後で最後に学級委員長の康明と“岡本佐恵子"がくじを引いた。席替えはボクにとって一大イベントだ。いや、ボクだけじゃなくて皆そうだろう。横に誰が座るか、また周りに仲のいい人物がいるかで教室の雰囲気が変わってくる。
ボク達のクラスでは廊下側から、一号車、二号車、三号車と名付けられていた。クラス全員で三十七名いる事から真ん中の二号車の一番後ろの席だけ横三列に並ぶ形になっていた。一学期は偶然、ボクときゅうりと大豆が二号車の最後尾の席になった。だから、一学期は毎日がすごく楽しく感じたのを覚えている。今回も“できるだけ後ろでいい席になりますように”と神様に願いながらくじを引いた。ボクは三号車の窓際で後ろから二番目の席を引き当てた。しかも、斜め前には大豆が来た。それに加えボクの横はクラスでも男子の中で人気のある“小泉菜々子”だった。ボクは心の中で“やったね”とガッツポーズをした。菜々子は席に着くとボクを見て“よろしくね”と笑顔を見せて言った。ボクも“よろしく”と少し照れながら言った。その時の顔が滑稽だったのか大豆は今にも吹き出したいのを我慢してるようだった。きゅうりはと言えば一号車の前から二番目で廊下側の席たった。しかも横には男子にも勝らず劣らず気の強い“木下順子”だったので余計にがっかり肩を落とした様子だった。ボクにはその光景の方がよっぽど滑稽に見えた。

帰り道、きゅうりはずっと席替えの事を愚痴っていた。
「あーぁ。三学期、横がずっと順子だと思うと気が重いなぁ」
「三学期の間だけなんだから我慢しろよ」
「他人事だと思うからそうやって軽々しく言えるんだよ。お前らはいいよ。席も近いし、おまけにコアラ君の横は菜々子だもんなぁ」
「うらやましいかい?」

ボクがわざと嫌みったらしく言うときゅうりは、
「ああ、大いにうらやましいね」
と、怒鳴り声を上げた。
「ごめん、ごめん。そんなに怒るなよ。順子だって優しいとこあるぜ」
慰めの言葉をかけたがきゅうりは膨れっ面をしてすねたみたいだった。ボクも大豆もそれ以上は何も言わなかった。

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