馬鹿なミキサーがグオングオンとやかましい音をたてるまで、僕はぐっすりと眠ることができていた。
グオングオングオン。僕は寝直そうとしたけれど、ミキサーの奴はさらにやかましく音をたてはじめた。 なにしろ安さ以外に取り柄のないミキサーだ。こいつが家にきてからというもの、僕は毎日二時間くらい睡眠時間を削られていた。 毎日毎日、グオングオングオングオン。
そのやかましさに僕が悩んでいると、ガチャリとドアを開けてカカシのテルコが入ってきた。
「巻島サン、コーヒーイカガ?」と、阿呆みたいな笑顔を浮かべている。
「そうだねえ、じゃあもらおうか」
僕がそう言うと、やっぱり阿呆な笑顔を浮かべつつ、テルコはコポコポとコーヒーをカップにつぎ、僕に差し出した。僕はそれを一口飲むと、
「うん、テルコ、やっぱりまずいや。塩の味がするよ」と言った。
だけれどテルコは
「そう、それはヨカッタノ。アタシウレシイ」とニッコリ微笑んだ。
テルコはカカシだから、脳がないから、なにを言っても阿呆な笑顔でいるばかり。
僕は塩味のまずいコーヒーを飲み干すと、テルコを椅子に座らせてからまた寝直すことにした。