「ウィンベル。ご苦労だったな。わざわざ。」
皇帝らしき人が椅子に深く腰かけて、言った。
「…ところで…彼女は?」
「はっ。リク・ホンマという方でして、どうも彼女も…らしいので…。」
[彼らのいう、〇〇も とは…最近記憶を喰う者が現れて、その名の通り記憶をくわれ、酷い人は自分の名前すら忘れてしまう。]
と、小説に書いた覚えがある。どうも私は、それの被害者と思われてるらしい…。まぁ…いいけど…。
「まぁ。ウィン!帰ってきたのね。」
女性の声が響く。振り向くと、太陽の光を持っているような長い金髪の女性が現れた。素敵なドレスを身にまとい、その人はニコッと微笑んだ。
一目でわかった。この人も私が考えた登場人物の一人、
「フレア・マインド姫。」
だ。
フレアはこの物語のヒロイン。つまり、ウィンと結ばれる(予定)の人物だ。フレアは私を見て口を開いた。
「あら。彼女は…?」
「はい。彼女も…らしくて…。」
フレアは本当に力を入れたら折れるのではないかと思う程、細い手で私の手を包み込み、悲しそうに言った。
「…それは…お気の毒に…。」
だが、すぐに微笑み、答えた。
「何かあったら、無理しないで、相談するのよ。」
「あ…はぁ…。」
戸惑っていると、皇帝が口を開いた。
「フレア。もういいだろ…。お前は部屋に戻りなさい。ウィン。彼女を…。」
「はっ。」
そして、私を地下へと案内した。
途中、ウィンはピタリと立ち止まり、私の方を向き、
「あなた、何者です?」とたずねた。
「え…と…。……異世界……?」
「…?まぁ、とにかく…私の名前の名前を当てるわ…姫様の名前も当てるわ…偶然とは思えませんよ…。」
……。いや、それ1番言いたいの私…。だって、突然光に包まれたと思ったら、私が考えた世界に来てるもん…。ありえない…ありえなすぎる…。
「おや?…その首からぶら下げてるのは…?」
「ほへ?」
言われた所を見ると、ここに飛ばされる前に見た、十字架(クロス)があった。
というか…あの時拾っただけなのに…いつ、身につけたんだろ…?
と疑問に思った直後、ウィンは驚いて呟く。
「……聖なる十字架(セイントクロス)…!?」
「え?」
キョトンとした…。だって…セイントクロスとか言うのは、存在してない筈だからだ。