あしたなんていらないから?

あめの  2006-07-11投稿
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『あ。』




風は見事に彼女のスカートをふわりと舞わせた。


ほんと。見事に。





『ごっ…ごめっ…や、見てない!見てないから!僕見てないから…』
『ふとももまで見えた?』
『だっ!!だから見てないって!』



なんで僕がこんなに恥ずかしくならなきゃいけないんだろう。

本人はいたって冷静なのに。



『見たくせに。』

『見てない!!』

『顔が真っ赤。』

『暑いんだってば!』

『風が冷たいねってさっきまで話してたのに?』




見下されてる気分になるのは当たり前だ。


彼女の方が何枚も上手なんだ。僕よりもずっと。



『…ね。』
『なんだよ。』


僕はすっかりすねて、ふてぶてしい態度でかえした。



『昨日、"ブン"って。』
『ブン?』
『うん。呼ばれてたでしょ?』

あぁ。


『あぁ。あれ僕のあだ名なんだ。』
『あだ名?』
『わかりにくいよね。』


はははっと笑ったら、彼女はキョトンとした顔で


『なんで?なんでブンなの?』

と尋ねてくる。


それがなんだか嬉しくて
僕はすねていた事も忘れてわかりやすく説明した。


『文也の"文"ってさ、"ぶん"とも読めるでしょ?』
『あぁ!』
『そうそう。だからみんな僕のこと"ブン"って呼ぶんだよ。』


彼女があんまり納得するから、僕はちょっと得意気になった。
そして、彼女はキャンディーをもらった小さな子みたいに嬉しそうな顔をして


『あたしも"ブン"って呼ぶ。』


と呟いた。



僕はというと、よくききとれなくて、ポカンとした顔で彼女をみていた。

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