〜イントロダクション〜
「ここはどこなんだろう…」
1人の女が、あたりを真っ白く包まれたなかを、さまよっている。
…もうどれだけの時間をさまよっていたのだろう?
私は誰なんだろうか?
過去の事を思い出そうとすると思いだせない…なぜ?
ふと、前を見ると、1人の男がしゃがみこんでいた。
誰なんだろうか?
このまま通り過ぎようか…でも気になる。
不思議なことに、無意識に女は足を止めていた。
(女)「あ、あのー す すみません」
(男)「はぃ?」ややしぼんだ声で男は返答した。
(女)「ここで、何をしてるんですか?」
(男)「特に何も…」小さな声で返答してきた。
(女)「そうですか…」このまままた、さまよっていくのか…いや、何も解決しない。そうだ!
やっと巡り合えた人間だ。
何もわからないまま去るのは嫌だ!
(女)「あのーすみません」
(男)「はい?」
(女)「ここはどこなんでしょう?…私、ずっと迷ったままで…」…この人だったらわかるかも知れない。
そう思っての質問だった。
(男)「はい?…僕にもわかりません。気づいたらここにいたんです」
(女)「気づいたら?」
(男)「ええ…。ここに来る前は、特に何の意識もなく、気づいたらいたんですよ。ただ…」
(女)「ただ…?ただ何ですか?」
女の問いに、男は少し黙ってしまった
(女)「教えて欲しいんです。私、今まで、わけもなくさまよってました。やっと、話せるんです。だから教えて欲しいんです」
まくしたてる女に圧倒され、男は答えだした。
(男)「…わかりました。ただ、覚悟して欲しい。」
(女)「覚悟?」
(男)「僕は、かろうじて、自分が誰だかわかる。どうして、こうなったかも…。あなたがさまよっている理由もわかるかも知れない。それでもいいですか?いやなら…」
(女)「…かまいません。それで何かわかるなら。それで自分のことがわかるなら。私、自分がわからないから」
意を決した女に、男は、「こちらに来てください」と招き、語りはじめた。
(男)「下を見てください」
男は下を指差した。