シンジは、一度見たもの、聞いた事は絶対に忘れない。何故か子供の時からそうだった。
周りのみんなそうだと思っていた。しかし、違った。
ある時、学年でトップの成績をとった。全教科満点だった。家族はとても喜んだが、クラスの、がり勉というアダ名の男にカンニングだと根拠のない噂を流された。もちろんシンジは実力を発揮しただけだ。
人の噂は恐ろしい。誰も本気で信じる者はいなかったが、からかわれるようになった。シンジは心底そんな人間を軽蔑した。小学四年の頃だった。
それから、テストでは何問か、わざと間違えて提出するようにした。シンジは、あまり自分の考えをあまりしゃべらないようなった。
誰にも本当の心を見せないようにした。
数年後…。歳の離れた姉が、子供を連れて帰ってきた。それが明菜だった。彼女は自分の事をアッキーナと呼び、何故かシンジの後をついて回った。
心を閉ざした天才が、幼い姪にだけは心を許した。
明菜は、子供の頃から可愛かった。美人の姉の血を引いている。
それに比べ、シンジはストレスからか、脳をやたら使うからか、やたら食べる量が増えて太ってきた。もっとも、二人の兄は、すでにもっと太っていた。彼らの場合、単に食べ過ぎだろうが…。