始まりと終わりは直線ではない
横道に反れながら終わりへと向かうだけ
此処で始まってしまったから
『部屋に戻って寝ますね』と出て行こうとする私の体を引き寄せた
『行かないで』
『そばにいて』
私がずっと言えなかった言葉を貴方は簡単に口にしてしまえる
だから首を振った
『いつまでもこうしていたら離れたくなくなりますから』と小さく笑った
『だったら離れなければいいじゃない』
甘える仕草
そうじゃない
本当にそう思えたから
例え今離れなくてもいつかは離れなければならない
せめて今貴方を振り切らないときっと私は貴方に執着してしまう
引き返せない所まで来てしまったから
それが怖いから
『席が離れてしまったからもう離れたくない』と貴方が寂しそうに言った
それを聞いて不意に涙が零れそうになった
私はちゃんと貴方の隣に存在していた
体だけではなく私という人間の存在価値があったのだと
いつも横顔だけを見ていたけど
本当は少しだけこっちを見てくれていたのだと
苦しみでもがいた日々
気持ちはないんだと落ち込んだ日々がその貴方の言葉で報われた気がした
『君の隣は居心地が良かったよ』
眠たそうな貴方の顔を見て
『私もです』と告げた
これが愛の言葉
『好き』とか『愛してる』とは違うけど
十分過ぎる程の言葉
『また明日職場で会いましょう』
貴方の頬にキスをして部屋を出た
一人に戻ると込み上げる涙
我慢していた分
止まらなくなってしまった