そもそも僕、“西条健治”は入りたくて保健委員会に入った訳じゃなく正確に言うと仕方なく入ったというのが一番適してる。
最初は生徒会に入りたくて五年生の三学期に生徒会長に立候補した。一年生の頃からずっと生徒会長というものに憧れていたからだ。僕も含めて四人が生徒会長に立候補した。残念ながら僕はこぼれて生徒会長には“高杉圭吾”が選ばれた。それから六年生になって掲示委員会以外に入ろうと考えたが第一希望の放送委員会も第二希望の美化委員会も第三希望の図書委員会にも他に立候補者がいてあみだくじをした結果、僕はどこの委員会にも引っ掛からずしぶしぶ残った保健委員会に入る事になっのだ。しかも男子は僕一人で後、二名は静香ちゃんとなっちゃん女子だ。“両手に花だからいいじゃないか”と弘昌は僕にそう言ったがお世辞にも決して二人は美人じゃない。もちろん、外見で人を判断するのは良くない事だとは十分理解してるつもりだがその時はついついそう思ってしまった。頭で理解していても心が理解してくれないのだ。こればっかりは仕方がない。“運がないなぁ”とつくづく自分の運のなさを恨んだものだ。
美香には“達也”という僕より三歳下の弟がいた。僕達の学校は一年生から六年生まで男女二名のペアを組み計十二名の班を作成して掃除を行う。達也とは同じ班になった事から親しくなった。美香を好きになってからは情報収集の為に話題に何回か上げた事があった。また、普段はテレビ見たさに近道までして帰る僕だったが達也と帰り道が一緒になると周り道をして帰る事もあった。送って行くついでに好きな女の子の家を知りたかった事からだ。 僕は土曜日と日曜日にそろばん教室に通っていた。土曜日は夕方の四時からで日曜日は朝の八時から行われていた。そろばん教室には美香と親しくしてた友達もいたが辞めるまでその女の子とは一度も会話をしなかった。土曜日周り道をして寒い中、美香の家の前を自転車で何回か通った事があった。話すきっかけを期待しての事だ。最初に通った時、家の前のじゃりの駐車場で達也や近所の友達とサッカーをしていた。今で言うとフットサルと言った方が適してるかもしれない。勇気のなかった僕は横目で見ながら自転車で通り過ぎようとした。僕に気づいた達也が手を振ってきた。僕も笑顔で手を挙げた。美香も僕に目を向けた。僕は恥ずかしくて目をそらし自転車のスピードを上げた。