夜はウィスキーをそのままストレートで飲む。
フラフラになる…記憶を飛ばせる…意識を飛ばす…。
自分の血に負けちゃてはいけない…。
どんなに満ち足りた気持ちでベッドに入っても、
夜中『乾き』で目が覚める…。
『乾き』…。
この欲求に負けたら、私は犯罪者だ。
今はとにかく酒で感覚を麻痺させる。
そうすればまた睡魔に負ける事が出来るんだ…。
朝、目が冷めたら『人間』としての一日が始まる。
それを信じて私はまたウィスキーを飲み目を閉じる…。
携帯のアラームで目が覚める。
あぁ、今日も『乾き』に打ち勝つ事ができた、神様ありがととう。
こんな事を考え、ほくそ笑む。
一人でたいした事ない朝食を食べ、
歯磨きをしながら新聞を眺める…。
メイクをしスーツに着替え、OLの菅野観月として出社する…。
あぁ、今日も無事『人間』としての一日を過ごせる。
神様ありがとう…。
私には両親はいない…。
二人とも私が12歳の時死んだのだ。
ハンターに殺された。
人間とバンパイアとの禁じられた恋愛の結果だ。
両親がどんな風に出会い、どんな風に恋愛をしたのか…。
聞いたのは両親が死んだ後だ。
母の姉…すなわち叔母から聞いた。
私は父からのバンパイアの血と母からの人間の血を受け継ぐハーフ…。
理解できた。
すべてに説明が付いたから…。
何故普通の食事で満ち足りないのか?
何故日光を欝陶しく感じるのか?
私はものごころついた頃から欲求を感じていた…。
一体何かわからない欲求を…。