みゆきと出会ったのは、新宿歌舞伎町の店だった。キャバクラと風俗の間に位置する店。性的な行為は無いけれど、キャバクラのようにキャスト(店の嬢)の隣にただ座って話をするだけでもない。そんな店でみゆきは働いていた。
地元が埼玉県の僕は、職場の関係で渋谷区に住んでいる。職場に友達はいないし、近所に住んでいる知り合いもいない。毎日働いて帰宅して寝て起きて働いて。休日の日曜は溜まった洗濯物に追われ、気付いたらいつも夕方。そんな毎日にストレスは貯まらなかったけど、寂しさだけからは逃げられなかった。
給料日が土曜だった2月。いつもなら部屋に直行して寝るだけ。しかしその日は新宿で遅めの打合せかあり、終り次第直帰になっていた。20時頃無事打合せは終り、僕は歌舞伎町を抜けて新宿駅に向かっていた。
「寂しそうな顔してるね」
声をかけられ振り向くと、小太りの中年男性。
「最近、女の子と触れ合ってないでしょ」
「どう?高くないし時間潰しにセクキャバ行かない?」
あぁ、おっバブか。どうしようか。幸い財布の中には諭吉が10枚程。
「近いの?その店」
「すぐそこだよ。今なら空いてるし、すぐ入れるよ。」
「いくら?」
「普通ならワンセット40分で8000円、でも初回で紹介って事で4000円でいいよ。」
「んー。とりあえず案内して。行ってから決めるわ。」