欲しいモノは、一つだけあった。
それ以外のモノは、本当、必要でもないんだ。
一つだけあるんだよ。欲しいモノ。
それ以外のモノに囲まれて、手に入らない一つを忘れたいのか、ごまかしたいのか。
モノが増えれば増える程、自分がくだらない存在に思える。空しく、仕方が無いからアルコールを呑む。呑めば呑む程、実際に下らない人間に墜ちる。堕ちる。落ちる、おちる。
自分の下らなさを露呈するだけ、しようか。
どうせ、下らない人間なのだから。
どうせ、私は、手に入らない。どうせ、私には、手に入らない。
欲しいモノ。欲しかったモノ。
あの人の、心臓が欲しかった。あの人の、血が欲しかった。あの人の、肉が欲しかった。あの人の心が欲しかった。あの人の顔が欲しかった。あの人の声が欲しかった。あの人の息が欲しかった。
ああ、下らないモノが増え過ぎて、
どうしよう。
欲しいモノなんか、本当は、何一つ、ありはしない。
あの人以外のモノなんか、本当は、何一つ、要りはしないのに。
ああ、たぶん、これからも、要らないモノが増えていくだけだ。